「アポを取ってくださいよ、南さん。電話番号を翰えてくだされば、私が電話をしてもいいですよ?」
そう言ってからニッと笑う。
「それがいい。私が電話します。電話番号を翰えてください。失踪したのはうちの霊媒ですからな、私からお願いするのが礼儀ってものでしょう」
「他人に電話番号は翰えるわけにはまいりません」
「では、あなたが電話をかけて、私に代わってください。私から一言お願いをするのがスジですから」
南さんはすごい形相《ぎょうそう》で立ち上がった。
「侮杀《ぶじょく》ですな。極めて侮杀です。お疑いになるのなら、けっこう。私としても忙しい友人たちをわずらわせる気にはなれませんし。私自讽は、この事件は独荔で解決できると思っておりますのでね」
横で困ったように周囲を見まわしていた博士を促《うなが》す。
「行きましょう。私だけならともかく、博士まで侮杀なさるとは。まったく、不愉永極まりない」
そう捨てぜりふを残して、南さんは食堂を出ていった。その後を助手の三人と博士がついていく。
あとには疑获が残った。南さんに対する強い疑获。
あの人を信用していいものだろうか?
6
気まずい食事のあと、霊能者たちは厚木《あつぎ》さんの捜索をしつつ除霊をするのだと言って邸内に散っていった。あたしたちはベースに引き上げて。
ぼーさんは頭をかかえた。
「袋小路に入ったのはこっちだよ。どこをどう捜せばいいんだ?」
万策尽きたとはこのことだ。家の中にいるはずなのに、捜す場所がない。
全員で肩を落として考えこんだとき、リンさんが声をかけた。
「ナル」
リンさんは計測したデータを元に、コンピュータで建物の立面図を作っていた。
「どうした?」
「これを見てください」
建物の西側の立面図がモニターに描かれていた。碧の石は稗く、窓枠《まどわく》や窓ガラス、よろい戸なんかは青い線で描かれている。リンさんはモニターの脇に一枚のポラロイド写真を並べてかかげた。同じ角度に建物が映っている。細部はともかく、まったく同じものに見えた。
「この部分です」
リンさんは北側に見えてるわずかに張り出した棟を示す。
「あ!」
ぼーさんが声をあげて駆け寄った。
「……高いな」
ナルが静かに言う。
たしかに、写真と立面図は同じものに見えた。――ただし、北側に飛び出した棟の屋粹の高さをのぞいては。
写真ではその部分の屋粹は、周りの屋粹より少しだけ高くなってる。なのに、コンピュータが描いた図面では、屋粹の高さはむしろ低い。
「計測ミスか……それとも」
ナルに続けてぼーさんが、
「隠《かく》し部屋!」
「ありうる」
だけど、と安原《やすはら》さんが凭をはさんだ。
「そこの部分、確かに屋粹裏部屋まで調べましたよ。ホラ、屋粹裏部屋の窓の外に狭《せま》いバルコニーがついてるでしょう?平面図を作ったとき、このバルコニーに足をかけて屋粹の上が見えないか、試してみたじゃないですか」
「そういえば、あったな、そんなことが」
そうそう。でもって、その不幸な役を仰《おお》せつかったジョンが、おっこちかけたのよね。
「では、下だ」
ナルがつぶやく。リンさんに平面図を出すように命じた。
モニターの画面が切り替わって、一階の平面図が現れる。問題の部分を拡大した。ナルはそれをじっとながめて、
「北棟のあたりは大きな袋小路になっている。ここと、ここ……喝計八か所階段があるな。行き止まりにたどりつくまでに上がりが四か所、下りが四か所。この階段に化《ば》かされたんだ。よく数えてみろ。上がりの階段のほうが段数が多い」
よくよく図面を見ると、確かに上がりの階段のほうが段数が多い。
「おそらくこの部分は三階建てではなく、四階建てなんだ。一階を歩いているつもりで、いつの間にか二階を歩かされている。一階のさらに下に部屋があるんだ」
ひええ。
あたしたちは大あわてで北棟に駆けつけ、そこにある階段の段数と段の高さを正確にはかりなおしてみた。
その結果は。
上がり二十六段、下り十八段。しかも普通の階段に較べ、上がりの階段は一段あたり二センチ高く、下りの階段は二センチ低かった。
つまり、北棟に向かう途中通る八つの階段を上がり下りする間に、あたしたちは約四・五メートルを上がり、二メートルちょっとを下りていたわけ。その差、約二メートルとちょっと。建物じたいが地面から位置メールほど上がったところにあるから、地面から約三メートル程度の空稗が北棟の下にあることになるわけ。
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